魅惑の果実
それに相手はお客さんなのに……。


こんな態度とっちゃダメだよね。



「失礼な態度をとってしまってすみません……」

「どうした? 急にしおらしくなったな」

「私にだってそういう時くらいあります。 これでも反省してるんですからね」



あっ……。


桐生さんがフッと小さく笑みを零した。


ヤダ……なんか、落ち着かない。


膝の上でドレスをギュッと握った。



「いい、お前はそのままでいろ」



そのまま……って?


しおらしくって事?



「言いたい事を言え。 遠慮なんかするな」

「でも……いいんですか?」



だって桐生さんって偉い人だよね?


こんな小娘が意見していい人じゃない筈。



「俺がいいって言ってるんだ。 何を遠慮する事がある」



まぁ、それもそうか。


本人がいいって言ってんだから、気にする事ないか。


いやぁ……本当にそれでいいのか?


なんかもうよくわかんなくなってきちゃった。


ーバンッ!!!!!


うおっ!?


ドアが勢いよく開き、肩がビクッとなった。



「桐生さんっ!!」



咲さんは小走りで桐生さんに近付くと、そのまま抱き付いた。





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