魅惑の果実
_カシャッ。


少し驚いた顔をする桐生さん。



「えへへっ、撮っちゃった」

「消せ」

「えぇ〜それは嫌。 いいじゃん一枚くらい」

「写真は好きじゃない」



海を眺める桐生さんの瞳が何だか悲しそうに見えた。


どうしてそんな顔するの?


せっかくの楽しい雰囲気が少し重たくなった。


ケータイ画面に写る桐生さんの綺麗な横顔。


この写真を見る度に今日の嬉しかった事、楽しかった事を思い出すだろう。


でも、今感じているこのモヤモヤと胸の締め付けも思い出すかもしれない。



「そろそろ行くか」

「あ、うん」



デザートを食べ終えると直ぐに桐生さんにそう言われた。


本当は二人で写真撮りたかった。


そんなこと言える雰囲気じゃなくなっちゃったけど……。



「もう帰るの?」



桐生さんが忙しいのは分かってるけど、あともう少しだけ二人でゆっくりしたかった。


次またいつこんな風に過ごせるか分からない。


私も受験生だし、親の圧力とか諸々あって、今まで通りとはいかない。



「少し海辺を歩くか?」

「うん!!」






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