魅惑の果実
太陽の暖かな光が降り注ぐ海辺。


だけど風はほんのり冷たくて、もう少しで秋になるんだと感じた。


指を絡めて繋がる手は温かい。



「明日からまた忙しいの?」

「そうだな」

「私も勉強頑張る。 受験生だしね」

「困った事があれば、遠慮せずに言え」



それってお父さんの事?


心配してくれてるだ。


こんなに心強い味方がいる。


それだけで十分。



「負けないよ。 あんな人に負けてらんない」

「そうか、一人で無理はするな」

「何かあったらまた話聞いてね」

「あぁ」



桐生さんに寄り添った。


大好きな香りが風に乗って鼻をかすめる。



「桐生さん、大好きだよ」



見上げると、桐生さんと目が合った。


この優しい瞳をずっと見ていたい。


好き。


こんなに人を好きになったのは初めてで、どうすればこの想いが桐生さんに伝わるのか、どうすれば溢れ出る気持ちを抑えられるのか分からない。


気持ちが大きくなればなるほど、独占欲も強くなる。





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