魅惑の果実
「今週の日曜日なんだけど、美月空いてる?」

「……空いてる」



桐生さんはどうせ仕事だろうし……。


ってか、暫くは桐生さんと顔を合わせたくない。


ものすごく性格の悪いことを言っちゃいそうだから。



「健人君部活休みらしくてさ、遊ぼ〜って話になってんだけど、美月も一緒に遊ぼうよ!」

「いや、それは流石に遠慮しとく。 せっかくなんだし二人で遊びに行ってきなよ」

「そんな状態の美月ほっぽって、私だけ遊び行くとか出来ないよー!!」



本当に明日香は気ぃ遣い〜なんだから。


心配と気を遣わせてばっかだな、私。



「私なら大丈夫だよ。 たまには一人でゆっくり過ごすのもいいしさ」

「何言ってんの! 私たち受験生なんだよ!? たまには息抜きも必要だよ!!」



息抜きねぇ……。


確かにそうだけど、何したらいいかさっぱり分かんない。



「あ! 翔君は!?」

「えぇ〜……翔?」

「いいじゃん、翔君っ! 日曜日、翔君も誘って、四人で遊ぼうよ!」

「…………」


とびっきりの笑顔を向けられ、私は何も言えなかった。


日曜日、健人君と二人じゃなくて本当にいいんだろうか……。





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