魅惑の果実
夜お店で桐生さんと会うことはなく、週末マンションに泊まりに行くも、桐生さんは一度も帰っては来なかった。


桐生さんと交わした何通かのメール。


いつもならどんなに短い内容だろうと、メールを見ただけで嬉しくて堪らなかったのに、胸が痛くてしょうがなかった。


そんな中やってきた日曜日。


天気はいいけど、私の心はどんよりしてる。



「今日はとにかくパーっと楽しもうよ! ね?」

「そうだね」



遊園地の入り口付近で、明日香と一緒に翔と健人が来るのを待っている。


桐生さんとの事を知っている明日香は私に気を遣ってくれている。


悪いことしてるなって思うものの、どうしようもなかった。


とにかく、極力桐生さんの話題にならないようにしよう。



「あ! 健人君!! 翔君!!」



明日香は笑顔で手を振ると、二人に駆け寄った。


健人と並ぶ明日香は幸せそう。


二人は凄くお似合いだと思う。



「おはよう。 待たせちゃってごめん」

「おはよう。 全然待ってないよ」

「早く入ろう!!」



前を歩く明日香と健人。


良い雰囲気なんだから、さっさと付き合っちゃえばいいのに。






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