魅惑の果実
料理が来る前に、私たちはグラスを合わせて乾杯した。


烏龍茶と赤ワイン、制服姿とスーツ姿……凄い組み合わせだなと思った。



「で? 桐生とは上手くいってんの?」

「……たぶん」

「なんだそれ。 あいつが女とまともに付き合うなんて久しぶりだし、美月ちゃんは大事にされてると思うよ?」



まともに付き合うのが久しぶり?


桐生さんが?



「……瞳さんは?」

「瞳? あいつはそんなんじゃないって。 桐生から何も聞いてねぇの?」

「妹みたいな存在だって聞きました」

「そうそう、瞳が中学の頃から桐生は知ってるから、ある意味妹みたいなもんなんだろうな」



え!?


そんな昔からの知り合いなの!?



「二人がそんなに長い付き合いだとは知らなかったです……」




それだけ長い付き合いで男女の関係がないなら、ある意味安心していいのかもしれない。


でも昔の桐生さんを知ってる咲さんに嫉妬してしまう。


そんな事を思い出したらきりがないけど、やっぱりどうしても思わずにはいられない。






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