魅惑の果実
問題集を開いても、集中出来なくて一問も進まない。


シャーペンを握る手も動かない。


思考も上手く働かない。


涙は止まったものの、ため息は止まらない。


誰かと付き合って、こんな浮き沈みの激しい付き合い方は初めてで、ただ困惑しかなかった。


もう直ぐクリスマス。


楽しむ事だけを考えればいいのかな?


そうすれば、悩みも知らないうちになくなるのかな?


今日見たもの、感じたものもなかった事に出来ればいいのに……。



「いたのか」

「え!?」



部屋が明るくなり、振り返るとネクタイを緩めながら部屋に入ってくる桐生さんがいた。



「お、お帰り」

「あぁ。 電気が消えていたから、寮に戻っているのかと思った」



外を見ると既に暗くなっていた。


陽が落ちている事に気付きもしなかった。



「あっ!!!!」

「いきなり何だ」

「夕飯作ろうと思ってたのにすっかり忘れてた……材料まで買ったのに……」



何やってんだろ、マジで。


どうしてこう上手くいかないんだろう……。


最悪。





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