魅惑の果実
桐生さんの顔を盗み見するが、気にした様子はない。


私が料理をしようがしまいが興味ないのかも……。


つい悪い方向に考えてしまう。



「食事はしていないのか?」

「うん……桐生さんは?」

「まだだが、昼が遅かったからな」



って事はお腹空いてないって事?


私はご飯の事を思い出したらお腹空いてきたよ。



「何処か食べに行くか?」

「ううん、家でゆっくり過ごしたいからデリバリー頼んでもいい?」

「あぁ、好きな物を頼め」



二人で外食って気分じゃない。


写真の女性と桐生さんのツーショットを想像してしまう。


想像しただけでもお似合いだ。


デリバリーを決めるのも面倒くさくて、頼み慣れているピザにした。


赤ワインを飲んでいる桐生さんの横顔を見つめた。


謎が多くてムカつくけど、顔を見るとそんな感情も不思議と薄れてしまう。



「お前も飲むか?」

「じゃあ一口ちょうだい」



桐生さんが飲んでいる赤ワインを一口飲んだ。


仕事モードの時は気にならないけど、こうしてプライベートで飲むと、味の渋みや辛味を感じる。


ワインって大人の飲み物って感じ。





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