魅惑の果実
「寝不足か?」

「あぁ……えっと、少しだけ……」

「昼間も働いているのか?」

「将来の為に昼間は色々と勉強したり何だりしてるの。 だから遅く帰った日でも朝はちゃんと起きるようにしてる」

「そうか」



VIPルームで桐生さんと二人きり。


以前、うっかり敬語を使わずに喋ってしまい、それ以来桐生さんにはタメ口で喋っている。


勿論その時は慌てて敬語で言い直したけど、桐生さんから『敬語じゃなくていい』と言われ、敬語を使うのを止めた。


咲さんは桐生さんに対して敬語を使っている。


それなのに私はいいのかな?と思いつつも、特別な感じがしてつい桐生さんの言葉に甘えてしまった。



「桐生さんは仕事はいつ休みなの?」

「特に決まっていない」

「えっ!? 休みなしなの!?」

「特に休みを設ける必要などないだろう」

「体調崩しちゃうよ!?」

「そんな軟弱な男に見えるのか?」



鋭い目付きのまま口元を緩める桐生さん。


その表情に胸がトクンッと高鳴った。


スーツの上からでも分かるほど、桐生さんの身体はガッチリとしている。


身長は高く、ピンッと伸びた背筋、スラッとした長い足、全体的に引き締まっている身体。


私は首を横に振った。





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