魅惑の果実
____……。



「……きっ、み……き、美月っっ!!」

「っ……っ!?」

「大丈夫? 何かうなされてたけど……」

「う、うん、大丈夫……今何時?」

「七時半だよぉ。 朝ごはんの準備してくるねっ」

「うん……ありがとう……」



明日香がベッドルームから出て行き、ため息が漏れた。


嫌な夢を見た。


今更小西との事を思い出すなんて……。


もう終わった事なのに怖くてしょうがない。


事件直後よりも今の方が怖く感じるのはどうして?


微かに震える体を自分で抱きしめた。


膝に顔を埋め目を閉じると、不思議なくらいあの日の出来事が鮮明に蘇る。



「こらぁ〜!! 寝坊助!! ご飯出来たから早く着替えなさぁい!!」



明日香の明るい声にハッとなり顔を上げた。



「ご、ごめん。 着替えたら直ぐ行く」

「じゃあ食べないで待っててあげる」



ここは明日香と暮らす寮の部屋。


私にとっては安心できる場所の一つ。


もう小西はいないんだから、怯える必要なんてない。


兎に角、早く準備しよう。





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