魅惑の果実
「莉乃さん、お願いします」



待機席に座ったら、待機する間も無く店長に呼ばれた。


案内された席にいつもの様に笑顔を浮かべて座る。


この界隈で飲み歩いてる人たちは何の職業なのか、いまいちよく分からない。


白黒ハッキリした会社じゃなくて、凄く曖昧でグレーの人ばかり。


でもお金は持ってる。


何して稼いだお金なのか聞きたくもないし、知りたくもない。


このお店で働いていると、お金を持つとこうも人は偉そうになるのかと思う。


桐生さんは偉そうというか威圧的。


そこが堪らなくそそるんだけど……って、あれ?


私って俗に言うM?


二時間ほどフロアの席をあちこち回って、次に案内されたのはVIPルームだった。


年末も近付いてるということもあり、店内は結構混んでいていつもよりアルコールも回っている。



「失礼致します」



店長の後に続き部屋に入ると、大好きな桐生さんの姿が目に映った。


桐生さんの目の前に座り、二人きり。


未だにドキドキは薄れない。



「最近忙しいの?」

「少しな」



珍しく疲れた顔をしている気がした。





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