魅惑の果実
お風呂場では手は出されなかった。


その代わりとでも言うように、桐生さんからはキスの嵐だった。


キスに応えるのが精一杯で、ただ桐生さんに翻弄されていた。


今だってそう。


ベッドの中の桐生さんは激しくて、私は応えるだけでいっぱいいっぱい。


でも触れる手や唇は優しくて、つい甘えて善がる私を難なく包み込んでしまう。


子供な自分が嫌で、桐生さんの周りにいる綺麗な女性を羨んだ。


時には妬む事だってあった。


だけど、桐生さんが今のままで良いって言ってくれるなら、もう周りの人たちと自分を比べるのは止めよう。


そんな事をしたって桐生さんが望んでいないなら無意味だ。



「キス、して……っ」



激しく繋がる身体と同じ様に降り注ぐキスは激しく、熱を帯びていた。


心も身体も、もうこの人無しでは生きられない。


その想いが強くなればなるほど、疼きが増し、身体が桐生さんの熱を敏感に感じ取る。


繰り返される情事、だんだんと白くなっていく頭の中。


幸せの最中、私の意識は薄れていった。





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