魅惑の果実
リビングのソファーに二人で並んで腰掛け、お庭で明日香と健人と楽しそうに花火を始めた帝を見詰めた。


こうしてみていると、明日香と健人が親みたい。



「あの子……帝、だっけ?はさ、本当に美月の子供なの?」

「正真正銘私の子供だよ」

「でも苗字神楽って……離婚……したの?」

「そもそも結婚してない」

「は!?」



更に間抜け面な顔になる翔。


可笑しくて思わず吹き出した。



「笑い事じゃないから!! ちゃんと説明してよ!!」

「翔の顔が面白くてつい……ごめん。 ちゃんと話すから、そんな不貞腐れないでよ」



翔の頬を軽く摘むと、翔は小さく笑った。


手を取られ、ギュッと握り締められた。



「聞かせてよ。 連絡が取れなかった間の事……」



妊娠が分かってからの事を話した。


覚えている事全て。


咲さんとの事、桐生さんとの事、両親との事……辛い思い出をたくさん思い出した。


それでも涙は出なかった。


きっと辛い思い出と同じくらい、幸せな思い出もあるからだろう。





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