魅惑の果実
今まで抑え込んでいた思いを吐き出した。


吐き出し終えた後はとにかく最悪だった。


鼻は詰まって上手く息はできないわ、瞼は重いわ、頭はボーッとするわ……全てが最悪。



「ぶははっ! ひでぇ顔!!」

「社長!!」



相変わらず遠慮のない人。


いつもハッキリ言ってくれるから逆に気持ちがいいくらい。



「大雅さん、美香ちゃん……本当に、ありがとうございます」



鼻声でみっともない。


けど二人は優しい笑顔で返してくれた。



「ほら、帰る準備してこい。 送って行ってやるよ」

「でも……」

「社長の気が変わる前に準備しておいで」

「……うん」



大雅さんに頭を下げてVIPルームを出た。


この酷い顔を誰にも見られたくなくて、俯いて小走りで控え室に向かった。



「うわっ!?」



突然腕を引っ張られ、バランスを崩した。


直ぐ後ろでドアが閉まる音がした。


頬に感じる逞しい感触。


懐かしい大好きな香り。


そして温もり……顔を上げなくても誰なのか直ぐに分かった。






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