魅惑の果実
チラッと帝を横目で見ると、スプーンを片手にテレビに夢中になっていた。



「……結婚しようって言ってくれた」

「結婚!?」



明日香の大声に驚いた帝が大きく肩を揺らした。


帝の背中をポンポンと優しく撫でた。



「ビックリしちゃったね」

「あぁ〜〜帝ごめん! テレビ見てて大丈夫だからね!!」



帝は笑ってコクっと頷くと、再びテレビに目を向けた。


まだ小さいし、結婚って言葉の意味分かってないよね?



「本当にオーナーとはそういう関係なのね。 それで、何て答えたの?」

「帝と話をして連絡するって言ってある。 私は政臣と一緒になれるならなりたいけど、帝の気持ちも尊重したいから……」

「そう……そうね、二人だけの問題じゃないものね」

「大丈夫だよ。 きっと帝は分かってくれるよ」



明日香の励ましに笑って応えた。


私もそう信じてる。


けど、胸の中の不安は完全には取り除けなかった。


だって今迄は二人で生活してきたのに、いきなりお父さんだよって言ったって、混乱すると思うから……。


どう切り出せばいいのか……その事で頭の中はいっぱいだ。





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