魅惑の果実
着替えて小西さんの席に戻ると、小西さんが手を握ってくれた。



「ドレス着替えたんだね」

「はい。 ドリンク零しちゃって……」

「そんなドジな一面もあるんだね。 それでそんなに落ち込んでるの?」

「あ、ははっ……ばれちゃいました?」



そんな事で落ち込んでるわけじゃない。


自分でもよく分からない。


どうしてこんなに気持ちが沈んでるのか……。


大好きな桐生さんに会えた。


咲さんが居なくて、今日はゆっくり一緒にいられるのに……嬉しい筈なのに、カッとなって部屋を飛び出してしまった。



「莉乃ちゃんの顔をまた見られた事だし、帰るよ」

「え……」

「そんな顔しないで? 急用が入っただけで、莉乃ちゃんのせいじゃないから。 ね?」



小西さんの言葉にホッとした。


私のせいで小西さんに不快な思いをさせてしまったのかと思った。



「また……また、直ぐにお会いできますか?」

「勿論だよ。 莉乃ちゃんが会いたいって言ってくれたらいつでも駆けつけるよ。 莉乃ちゃんが会いたいって言う前に、俺から会いに着てしまうかもしれないけど」



素直に嬉しかった。


いつもストレートな小西さんの言葉は凄く心地が良い。







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