魅惑の果実
身支度を済ませ、靴を持ってベッドルームの窓を開けた。



「じゃあ行ってくるねぇ」

「はいよ〜、行ってらっしゃぁい」



誰にも見つからない様に周りを警戒しながら寮の外へ出た。


外出してるところを見られるわけにはいかないから、夜仕事が入ってる時はいつもベッドルームの窓から出入りしている。


窓の鍵を開けてくれてる明日香に感謝。


駅のトイレでフルウィッグと帽子を外し電車に乗った。


地毛は明るく染めていて、流石にここまで明るくしていたら風紀指導されかねない為、ダークブラウンの鎖骨あたりまであるフルウィッグを被っている。


今のウィッグは凄い。


じーっくり見なかったら暴露ない様に出来てる。


美容院に着くと、まだ時間が早いからか空いていた。


受付で名前を記入した。



「莉乃(りの)さん、おはようございます。 三番席へどうぞ」

「はぁい」



本名で働いてる人もいるけど、私は万が一の時の事を考えて、莉乃という源氏名を使っている。


違う名前なら何でも良くて、お店の店長が付けてくれた。



「莉乃さんおはようございます。 今日は髪型どうします?」

「おはようございます。 今日はハーフ下ストレートでお願いします」



初めてヘアセットを担当してくれた順子(じゅんこ)さんを、今では指名している。





< 5 / 423 >

この作品をシェア

pagetop