魅惑の果実
「お前は店以外でもそうなのか?」



桐生さんの言っている意味が分からず首を傾げた。


そうって……何が?



「お前の百面相は見ていて飽きないな」

「はい!?」



百面相って酷くない!?


だってしょうがないじゃん。


全部桐生さんの所為だ。



「素直な反応って言ってくれる? 本当、感じ悪い」

「それはお互い様だな」



口元に笑みを浮かべて赤ワインを一口飲む桐生さん。


私も一緒に赤ワインを頂いている。


桐生さんがワインを飲むのは珍しい。


それにしても……。



「今日咲さんお休みだよ?」



咲さんは知ってるのかな?


桐生さんがお店に来てること。


知ってたらすっ飛んできてるよね……。



「あぁ、知ってる」



知ってる……って……。


「じゃあなんで来たの?」という台詞が喉に引っかかったまま出てこない。


桐生さんのことだからきっと意味なんてない。





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