魅惑の果実
桐生さんの手が頬に触れ、涙が溢れた。



「お前は本当に可愛くて、面白い奴だな」

「うるさいな! ただの泣き上戸だもん!!」

「そんなに飲んだのか?」



小西さんの席では水割り一杯しか飲んでないよ!!


全然飲んでないのわかってるくせに……。


意地悪な顔ですぐにからかう。


桐生さんの手は大きくて硬くて、温かかった。


冷たいようで温かい人。


悪い人だと思いたくない。


今私の目の前にいる桐生さんが全てだと思いたい。



「責任とってよね!!」

「ただの泣き上戸だろう?」

「それでも泣かせたのは桐生さんでしょ!!」

「無茶苦茶な奴」

「もう! なんでもいいよ! ワイン〜!!」



ベルを押そうと手を伸ばしたら、桐生さんに腕を掴まれた。


触れる肩と肩。


胸が高鳴る。



「本気で飲むつもりか?」

「飲むよ!! 意識ぶっ飛ぶまで飲む!!」



酔ってしまいたい。


貴方にようよりも、お酒に酔ってしまった方が楽だから。


桐生さんがベルを押した。





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