魅惑の果実
やりかけの問題を解き、時計を見ると、もう夕方の五時を回っていた。



「そろそろ終わりにしましょうか」

「だぁぁぁ〜疲れたぁ……」



明日香は床に倒れこみ、大の字になる。


勉強が終わるといつもこう。


今や恒例の明日香の大の字。



「美香ちゃん、今日もありがとうございました」

「いいえ、どういたしまして」



気は乗らないけど、化粧直しするかな……。



「今日もお店?」

「ううん、今日は休みなんだ。 小西さんとご飯に行ってくる」

「え!? 小西さんと会うの?」



起き上がる気のない明日香に驚いた顔だけ向けられた。


本当、グータラ。



「今日言おうと思って……」

「別れるって?」

「うん」

「そうだね! 早い方がいいよ、絶対!!」



言おうと思ってるけど、いざ本人を目の前にしたらちゃんと言えるか……。


不安になってきた。



「すんなり別れられるといいわね」

「うん……」

「そういうのは二人きりで話しちゃダメよ? 外で食事してる時とか、周りに人がいるところで切り出すのよ?」

「何で?」

「周りに人がいる方が、相手も迂闊な行動取れないからリスクが減るの」



そうなんだ。


そんな風に考えた事なかった。






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