魅惑の果実
待ち合わせ場所に着いたはいいが、少し早すぎた。


どうしよう。


お茶するには中途半端な時間だし、かといってプラプラするのもね……。


取り敢えずケータイをいじいじ。


気付けば桐生さんの番号を出していた。


本当に入ってる。


自分で入れておいて、あれは夢だったんじゃないかと思った。


番号を押そうか押すまいか、指がフラフラと画面の上で無駄に動く。


電話じゃなくて、SMSにする?


メールなんてするように見えないし、送っても返事なんてなさそう。


返事返ってこなかったら落ち込みそう。


やっぱり電話かな……?


うん、電話にしよう。


電話番号に触れると、あっという間に電話がかかった。


耳に当てるとプルルルルルと機械音が聞こえる。


緊張する!!


六回鳴らして出なかったら切ろう。


三回……四回……五回……。


六回……。


電話を切ろうとした時、機械音が止んだ。



「も、もしも……」

「只今電話に出ることができません。ピーと言う……」



留守電……。


こうなることは考えてなかった……。


ガックリ。





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