魅惑の果実
ピー……_____。


あっ……。



「えとっ……莉乃だけど、その……」



どうしよ、何言えばいいか分からない。



「莉乃! ごめん、お待たせ」

「あ、こ、小西さん!!」



やば!


私は慌てて電話を切った。



「電話中だった?」

「いえ、大丈夫です!!」

「そう? じゃあ行こうか」



小西さんに手を取られ、振り払うわけにはいかず、手をつないだまま歩いた。


隣を歩く小西さんは優しい顔で喋っている。


桐生さんの言葉、小西さんの言葉、どちらを信じればいいのか分からない。


自分が見てきたもの、今見ているものを信じればいいのかな?


小西さんが予約してくれていたイタリアンレストランに入った。


ディナーの時間帯で見渡す限り席は埋まっている。


通されたのは夜景を見渡せる個室だった。


こんないい部屋……高そう。


ここまでしてもらって別れ話を切り出すって……気まずすぎる。






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