魅惑の果実
コース料理を食べながら、お店で話しているような事を話している。


やっぱり私たちは恋人同士という感じじゃない。



「具合悪い?」

「え? そんな事ないですよ?」

「いつもよりお酒を飲んでないみたいだから」



そういえばそうかも。


昨日はあんなに酔っ払いたかったけど、今日は飲む気になれない。



「お酒が美味しくなるようにおまじないをかけてあげるよ」

「おまじない、ですか?」



まさか小西さんがこんな事を言う人だったなんて……意外。



「目を瞑って」



言われるまま目を瞑り、思わず頬が緩んだ。


この食事が終わったら、ちゃんと話をしよう。


こんなにいい人をこれ以上私みたいなのが縛ってちゃダメだ。



「目を開けて」



目を開けると、さっきまで飲んでいたシャンパンの中にイチゴが入っていた。


せめてこの一杯は飲み干そう。



「ありがとうございます」

「美味しくなってると思うよ?」



シャンパンを一口飲み、小西さんに笑って見せた。



「凄く美味しいです」

「良かった」





< 69 / 423 >

この作品をシェア

pagetop