魅惑の果実
シャンパンを半分飲んだところで、小西さんのケータイが鳴った。



「ごめん、出てもいいかな?」

「どうぞ」



電話に出た小西さんは、手でごめんと合図をしながら部屋から出て行った。


ふぅ……疲れた。


カバンの中を見ると、ケータイに着信が入っていた。


もしかして!


慌ててケータイを見ると、桐生さんからの電話だった。


掛け直してきてくれた。


その事が嬉しくて堪らなかった。


小西さん、部屋から出て行ったって事は長引くって事だよね?


私は急いで桐生さんに電話した。


呼び出し音がなる。


とてもフワフワした音に聞こえた。


私、酔っ払っちゃったのかな?



「はい」

「桐生さん……」

「今どこにいる?」

「今? 今は、えと……」



何?


頭がボーッとしてクラクラする。


頭を起こしていられなくて、テーブルに項垂れた。



「莉乃!? 莉乃! 返事をしろ!!」

「き、りゅ……さ……」



遠くの方で桐生さんの声を聞きながら、私は眠ってしまった。





< 70 / 423 >

この作品をシェア

pagetop