魅惑の果実
「莉乃、お前はどうしたいんだ?」

「み、つき……私の名前は美月……」

「そうか。 それで、美月お前はどうしたいんだ」



甘やかすような優しい声。


大好きな、私が望んでいた声。


それなのにズルイと思ってしまう。



「わかんない……わかんないけど、離れるなんてイヤ……」

「俺の事が怖いんだろう?」

「怖くなんかないっ」



色んなことに驚いた。


本物の拳銃を見たのは初めてだし、そんな物騒なものを平然と持っている桐生さん。


そして顔色を変えることなく引きがねを引いた。


それでもそばにいるとこんなにも幸せなの。


好きで好きでしょうがない。


こんな危ない人を好きだと思う私は可笑しいのかな?


狂ってるのかな?


でも、誰がなんと言おうとこの想いは揺るがない……不思議とそう思える。



「とにかく家まで送る」

「イヤ……まだ、離れたくない……」

「お前は本当に子供で手がかかる」



そう言いながらも、私の頬を両手で包み上げ、私の顔を見下ろす桐生さんの顔からは鋭さがなくなっていた。





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