魅惑の果実
酷い顔。


明日になったら痣もできてるかもしれない。


顔だけじゃなく、身体にも……。



「き、桐生さん!?」



お腹に腕を回され、抱き寄せられた。


窓ガラスに映る私と桐生さん。


ガラス越しに視線が絡む。



「帰ったら手当てしてやる」

「手当くらい自分でできる」



手当なんてされたら、近くでマジマジと顔を見られる事になる。


そんなの無理。



「何を今更遠慮することがある」

「そんなんじゃないもん」



もう見て欲しくない。


好きな人には常に綺麗な姿を見てもらいたいのに、服も髪も顔もボロボロなんて、最低過ぎる。



「んっ……き、りゅう、さん……っ」



耳に桐生さんの唇が触れ、くすぐったくて心地よくて、身体が震えた。



「お前は可愛いな」



耳元で響く桐生さんの低い声。


全身が痺れて今にも溶けてしまいそうだった。






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