魅惑の果実
洗面台の鏡に映る自分の姿は想像以上に傷だらけだった。


殆どが擦り傷と痣。


たいした怪我じゃないけど、女としてこれは凹む。


手首と足首には縄の痕がクッキリ。


暫くドレスは着られそうにない。


スーツに黒ストッキングで店に出るしかない。


頑張って貯めてるお金がなくなっていく……。



「いったぁぁ……」



シャワーを浴びるとお湯が傷にしみる。


頭を洗い、身体を洗い、泡が傷口に触れるだけで声にならない痛みが走る。


我慢……我慢だ……。


傷にしみると分かりながらも、私は湯船に恐る恐る足をつけ、ゆっくりと浸かった。



「っっ〜!!!!!」



んはぁ〜。


ちょっと痛みが治まってきたかも……。


やっぱり湯船は気持ちがいい。


それにしても、桐生さんもいつもこのお風呂に入ってるんだよね?


そんなお風呂に自分がいることが信じられない。



「いい身体してるんだろうな……」



え?


今私……ヤダ!!


何考えてんの!!


桐生さんの色気はマジで毒だ。


解毒剤がないからもうどうしようもない。





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