魅惑の果実
厳格な顔をしながら、母と結婚していた時に外で子供までつくっていた父。


今思えば、その事を知った時の父への感情は軽蔑だったのかもしれない。


まだ幼かった私は、とにかく全てが気持ち悪くて仕方がなかった。


義母とは当然ながら上手くいっていない。


どちらかというと母親似な私が憎くてしかたがないのだろう。


けど、何故だか妹だけは昔から私に懐いている。


姉らしいことなんて一つもしてないのに。



「あー……」



変な事考えてたら余計目が覚めた。


嫌な思い出ってどうして忘れられないんだろう。


いらないのに……。


むくっと起き上がり時計を見ると、もう朝の四時を回っていた。


今日は勉強教えてもらう日じゃなくて良かった。


こんなんじゃ勉強も頭に入らないだろうしね。


私はベッドから降り、そのまま部屋を出た。


廊下もリビングも真っ暗だった。





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