魅惑の果実
少し躊躇したが、ゆっくりとドアを開けた。


音を立ててしまわないように気を付けて。


一人で眠りたくなくて、勝手に桐生さんの寝室に来てしまった。


部屋に入った途端、大好きな香りがした。


この香りだけで安心する。


足音を立てないようにベッドに近付くと、桐生さんが眠っていた。


わわわっ!?


じょ、上半身裸っ!


し、下は履いてるよね!?


変にドキドキしながら、潜り込むため布団に手を伸ばした。



「うわっ……!?」



突然押し倒され、おでこに硬くて冷たい感触がした。


これ、って……拳銃……?


桐生さんの鋭く射抜くような瞳に背筋が凍りつく。



「美月か……どうした……」



私から身体を離した桐生さんは、拳銃を枕下に隠した。


危うく殺されるところだった……。



「眠れなくて……」

「それで俺のベッドに潜り込もうとしたのか。 本当に子供だな」



悔しいけど何も言い返せなかった。


本当に昔から何も成長していない子供だから。




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