凛と咲け。


お父さんが、
お爺様のホテルを継いでから、

お父さん仕事が忙しくなり、
食卓から姿を消した。


お母さんも、
自分のブランドを持つようになり、

食卓をつくることもなくなった。


…それからお手伝いさんがきて…
透哉兄も、花梨ちゃんも、
テーブルを囲むことはなくなった。




…ふと、昔のことを思い出し、
頬から何かが零れた。


「…あれっ…。

なんだろうっ…。す、みませんっ。」


あたしは零れた何かを
慌てて手で拭う。

先生は、


「堪えなくていい。

たまには、流したっていいんだよ」


自分の中で何かが切れた。
プツリと、何かが。


…いつ振りだろう。

人前で、涙を流すのは…。


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