君を抱く手なのに傷付けそうで


「見ていたんですね……」


「分かる?」


「前にも同じことあったじゃないですか」


その時は、『心配せずとも私は継実さん一筋です』でお開きとなったが。


「毎回毎回“これ”じゃ、迂闊に外出出来なくなるじゃないですかー」


冗談めいた口調。されど、俺にとっては。


「そう、なればいい」


ずっと願っていたことだった。


まさかの返しだったか、彼女が俺の体を押し、離れる。


「継実、さん……?」


「……」


後ずさる彼女を追う。その内、ソファーの肘掛けに彼女の膝裏が当たった。転ぶまではいかないものの、肘掛けに座り込み。


「どこにも行かないでほしい。ここにいてくれ」


俺が、彼女を襲う図。座る彼女を押し倒し、背もたれに置きっぱなしだったネクタイで手首を縛り上げる。


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