君を抱く手なのに傷付けそうで
その過程、彼女は暴れることをしなかった。
怖くて動けないではなく――
「どことなく、察していましたよ」
致し方がない、と諦めているような眼差しで見上げられた。
「ずっと、我慢していたんですね」
愛してくれている彼女は、俺の全てを見透かしてくれていた。
「でも、まだ我慢しててくださいよ」
そうしてやはり、俺の思った通りの答えを返して来る。
縛られた両手首。合わせた手のひらで押される。
身動きを制限するなら後ろ手が確実だし、何よりもネクタイの固定はたかが知れている。
こんなことをしながら、彼女に嫌われるんじゃないかと怯えた俺の行動の末路。
「後悔するなら、最初からやらなければいいのに」