君を抱く手なのに傷付けそうで


「……」


舌打ちしそうになったのを抑える。


自身の苛つきを自覚し、いさめた。


――いさめなければ、今にも“あれ”に殴りかかってしまいそうで。


彼女と話す男が憎い。こうならば、恋人特有の嫉妬となろうが、俺の場合は、彼女と触れ合うもの全てだ。


この前、同性の友人といる場面でも今と同じ苛つきを覚えた。


自身の心の狭さに嫌気さす。自覚あったからこそ、まだ“手遅れ”となる事態までには行かないが――理性(リミット)は、刻一刻と壊れ初めている。


俺は、彼女を愛していた。


――愛し、過ぎていたんだ。


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