君を抱く手なのに傷付けそうで
苦しいと身動ぎされたので緩めるも、舌は未だに彼女の口腔へ。
息が出来ない、忘れた。苦痛から悦楽、転じて至福。このまま窒息死しても悔いはないと思い始めたところで、彼女が俺の額を小突いた。
「べたべた」
額を押され、互いの口が離れる。彼女が俺の襟元に顔を埋めていた。
ごしごしと拭いているらしい。
「継実さん、チョコ好きなんですか。私は好きで、継実さんと会う前に食べたんですが」
「は?」
「唾液出過ぎです」
それには「ごめん」としか言えないが、自身の変態ぶりを彼女に知られたかと絶望してしまう。
チョコの味がしたわけじゃない。何の裏もなく、単に“彼女の口腔”だからこそ分泌された生理現象であり。