君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
それ以上、和也君との会話はなくて、あるとしたら自宅までのナビをするだけだった。
そうしていると、自宅になんてあっという間に辿り着いてしまう。

自宅近くに車を寄せると、ハザードをたき、車を停止させる和也君。
サイドブレーキをかけた瞬間、現実に引き戻される。
本当はもっと和也君と一緒にいたい。
このまま和也君の車に乗っていたい。

でも、そんな願いなんて叶うはずもない。

隣にいる和也君にバレないよう、小さな溜息一つ漏らし、シートベルトをそっと外す。
そして無理にでも、どうにか笑顔を取り繕った。
だって別れるときくらい、やっぱ笑顔でバイバイしてぇし。

「……サンキュ。送ってもらって助かった!」

外はいまだに雨が強く打ち付けていて、車内にいてもその音が耳に響いてくる。
このまま降りたら全速力で家に行かねぇといけねぇ。
和也君の車が見えなくなるまで、本当はずっと見送りてぇけど、それさえもダメ。
だったら、いま目の前にいる和也君の顔、しっかり焼き付けておかねぇと。

「ごめんな?こんな恰好で車に乗っちまって……」

そう謝ると、和也君は悲しそうにふわりと笑った。

「いいえ。こちらこそすみませんでした。……こんな雨の中、待たせてしまって」

「いいよ、もう!それに、和也君はちゃんと来てくれたじゃん?……来てくれただけで、すっげ嬉しかったからさ!だからそんな気にすんなって!」

悲しそうに笑う和也君の顔を見ているのが辛くて、わざと明るく振る舞い、和也君の肩を乱暴に叩く。

「五條さん……」
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