君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
何より圭吾さんの面影が残っているあの部屋は、時々私を堪らなく寂しくさせる。

勿論嬉しい時もある。ベッドはほんのり圭吾さんの匂いがするし。


「...って!これじゃ私ってばただの変態でしょ!」


思わず声に出して自分に突っ込んでしまったが、今いる場所が街中だと気付く。

そして周囲からは冷ややかな視線。

やっ、やってしまった。

頭を下げ、足早にこの場を後にする。


三十二歳にもなったいい大人の女が街中で一体なにやってんのよ。


酔いはすっかりとさめてしまった。
そして気付くともう自宅近くまで来ていた。

帰ったらお湯貯めてゆっくりと浸かろうかな。
そんなことを考えながらも歩いていると見えてきた我が家。

六階の部屋には、いつものように電気など灯ってなどおらず真っ暗で...。


「真っ暗...じゃない!!?」


思わず二度見してしまった。

やばっ!私ってば電気つけっぱなしで朝出てきちゃった!?
それとも、まさか...。

一気に緊張が襲ってきて、私の足は早くなる。


もしかしたら、もしかして。

次第に足は駆け足になっていく。


「もう!早くエレベーターきてよ」


この時間でさえもどかしい。
やっときたエレベーターに乗り込み、十二階を目指す。

そして辿り着き、部屋のドアの前で息を整え緊張しながらも部屋の鍵を開ける。


ドアをゆっくりと開けると、いつもとは違い光が溢れていて、玄関にはいつもは置かれていないはずの大きな革靴。


やっぱり!!

すると聞こえてきた声。


「おかえり、菜々子」


「圭吾さん!!」


出迎えてくれたのは久し振りに会う圭吾さんだった。
さっきまではあんなにモヤモヤした気持ちでいたのに、そんなの今はどこかへ飛んでいっちゃった。

圭吾さんが目の前にいるだけで、こんなにもパワーが溢れてきちゃう。


「えっ、あれ?でも、どうして圭吾さんがこっちに...?」


いつも帰ってくる時は、必ず前もって連絡くれてたし、つい最近電話で話した時は今仕事が山積みで忙がしいって言っていたのに...。
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