君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
不思議に思いながら圭吾さんを見つめていると、圭吾さんはまるで悪戯が成功したような子供みたいに笑い出した。


「びっくりしただろ?」


付き合い始めてから二人で過ごす時間は少ない。
だけどこうやっていつも圭吾さんの新たな一面を知っていける。


「...かなりびっくりしちゃいました」


圭吾さんの真似をするように、子供みたいに頬を膨らませる。


「でも...嬉しいどっきりです」


嬉しすぎだよ。いないはずの彼がこうやって目の前にいるんだから。


「それはよかった。...早くおいで」


そう言って差し出された大好きな大きな手。
久し振りの圭吾さんのぬくもりにどきどきしながらも、ぎゅっと握り締める。


「あと少ししても帰ってこなかったら、電話しようと思ってたんだ」


「あっ、ごめんなさい。ちょっと友達と近くで呑んで、て...」


手を繋いだまま二人でリビングへと向かっている途中、とてつもないことを思い出してしまった。


「けっ、圭吾さん!何時に来たんですか!?」


「えっ...六時過ぎくらいだけど、どうしたんだ?」


やっ、やばい!やってしまった!!


「...菜々子?」


うぅ。圭吾さんの顔が見れないわ。
さっきとは一転、圭吾さんに引きずられるようにリビングへと入る。

リビングは綺麗に片付けられていて、ほんのりいい香りまでしちゃってる。

いよいよ私、本当に圭吾さんの顔が見れないわ。


「...もしかして部屋のことを気にしているのか?」


「...はい」


そりゃ勿論ですよ。
だって今朝会社に行く時は、こんなに綺麗に片付けられてなどいなかった。
ここ最近慣れない仕事に疲れが溜まっていて、休日はただ寝て過ごすだけで。
部屋の中は他人に見せられないくらい散らかっていた。
散らかっていたのに...今の部屋は綺麗すぎる。


「ごっ、ごめんなさい圭吾さん。女なのに片付けも出来ていない挙げ句、圭吾さんにやらせてしまって...」


一番見られたくない人に、一番見られたくない部分を見られてしまった。
圭吾さんだって疲れているのに。久し振りに帰ってこれたのに、部屋が散らかっていたらきっと呆れちゃうよね。
いや、きっと間違いなく呆れてるよね。
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