君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
冷たくて結構!


「さっ!早く行きますよ。遅れて伺うわけにはいきませんから」


三ヶ月副社長について学んだこと。
副社長の発言を真に受けて行動しないこと。大抵の話は聞き流すこと。


「あーあ。なんか櫻田さんが橘さんに見えるよ」


「それは光栄です。橘さんみたいにならないと、副社長の秘書は務まりませんので」


笑顔でそう言い、タクシーに乗り込み、副社長の隣に座る。

普通は助手席に座るものだけど、副社長は嫌らしい。隣に座ることを強要してくる。
最初は恐れ多くて断っていたけど、こんな人なんだと理解して今は普通に隣に座っている。


「それに櫻田さん、何かいいことがあったでしょ?」


「...えっ!!」


「な~んか朝からご機嫌がいいもんね。見てたら分かるよ。なに?なにがあったの?」


人をからかうような表情を浮かべながら狭い車内だというのに、私にじわじわと詰め寄る副社長。


「ちょっ...!辞めて下さいよ。副社長の勘違いです!何もありませんから」


「えぇ~?本当はその薬指の彼と、なにかいいことがあったんじゃないの?」


「なっ!...そっ、それはセクハラですよっ!?」


実は圭吾さんとのことは営業部の一部の人しか知らない。
知られると色々と面倒だし、仕事がやりずらくなると思って。だから彼氏はいるけど、圭吾さんではなくて違う人ってことになっている。



「アハハハハ!やっといつもの櫻田さんに戻った!」


いきなり笑い出し、やっと離れてくれた。


「セクハラって...!よく俺にそんなことを言えるよね、櫻田さんって」


「そっ、それは副社長が悪いからですよ!申し訳ありませんが、私は謝りませんからね!」


「うん、いいよ謝らなくて。それでこそ櫻田さんだから」


「えっ...?」


副社長を見ると、何もなかったかのように手帳を開いてすっかり仕事モードへと突入しちゃっている副社長。


...さっき、なんて言ったのか聞こえなかったんだけど。
まぁ、でもきっと副社長のことだからまた私の悪口か何かよね。

考えるだけ無駄!

そう思い、私も手帳を開き今後のスケジュールを確認した。


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「あっ、櫻田さん東京駅で買ったものもらってもいい?」


「はい」


タクシーを降りてすぐ、副社長は助手席に置かせてもらっていた荷物のことを突然言い出した。
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