君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
「ありがとう。ここの社長さん、これが大好物なんだ」


渡すと副社長はネクタイをキュッと締め直す。


あっ。本気仕事モードだ。

いつも冗談ばかりでふざけている。
そんな副社長だけど、本当にやる時はやる男だって分かっている。
こうやって取引先の好物や趣味を全て把握しているのは、さすがだなって思っちゃうし尊敬に値する。

三ヶ月そばにいて、こういう一面を見せられてしまうと、今までのことを水に流せてしまう。
橘さんもそうだったのかな?こんな気持ちで副社長の秘書をやっていたのかな?


ーーーーーー

ーーー


「それでは副社長、お疲れ様でした」


「うん。お疲れ様。だけど本当にいいの?時間も遅いしこのまま送っていくよ?」


「大丈夫です。私の家、近いので」


「...そう?じゃあまた明日」


「はい、お疲れ様でした」


タクシーに乗り込んだ副社長に、頭を下げる。
タクシーはすぐに走り出して。見えなくなるまで見送った。


「ふー、疲れた」


あのあと、特に問題もなく取り引きも無事終わり、副社長との日帰り出張は膜を閉じた。

今は東京駅。疲れきった今、いつもの私だったら副社長に甘えちゃうかもしれない。だけど、今日ばかりは疲れ切っている場合じゃない。


「菜々子!」


そう呼ぶ声の主は勿論圭吾さん。


「お疲れ様」


そう言ってやさしく頭を撫でてくれるのも圭吾さん。


「すみません、予定より遅くなっちゃって。だいぶ待ちましたよね?」


「いや、そんなことないよ。早く行こう。お腹空いただろ?」


「...はい!」


明日には圭吾さんはまた向こうへ帰ってしまう。
だから今日はちょっと豪華なディナーをして、いいところに泊まろうって言ってくれた。

手を繋いで圭吾さんと街中を歩いていると、いつも自慢したくなっちゃう。
私の彼、素敵でしょ?って。

前に桜子に話したら、子供みたいって馬鹿にされて笑われちゃったけど。
でも、こうやって一緒に歩けるのはいつもじゃないんだもの。
自慢だってしたくもなる。


三十二歳にもなってみっともないかもしれないけど、ダメなのよ。
私、圭吾さんが好きで好きで。
どうしようもないくらい好きで仕方ないの。



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「...んっ」


「悪い、起こした」


目が覚めたらベッドの中。
そして後ろから圭吾さんに抱き締められていた。
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