しあわせだ。あえてよかった。だいすきだ。


「できた」


メイの言葉と共に印刷機が唸り始める。浩平が立ちあがる。椅子に座ったメイよりも、浩平は壁のように高い。浩平のおなかにこつんこつんと頭をぶつけると、返事をするようにメイの頭をまた浩平は撫でた。
まるで、食べ始めたお菓子が止まらないかのようだった。「美味しいから欲しくなった」。

トントンと印刷物をまとめた浩平は、メイからホチキスを受け取ってぱちんと紙の束を留めた。部屋の電気を消して荷物を持ち、少しだけ暗くなった部屋で、最後に浩平は言った。



「――いいこ、いいこ」



猫が大好きな飼い主に頭を撫でられるように、目をつぶってうつむくメイの頭にまた浩平は手のひらをのせる。

浩平は、メイがそれで満たされることをきちんと知っていた。
甘えるメイを甘えさせることで満たされる自分のことも少しは知っていた。


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