こんな能力(ちから)なんていらなかった
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「ふーん……」
黒髪の少女はベッドに寝転んで嬉しそうな声を出す。
「優羽は今、あそこにいるんだ?」
数秒後分かってると微笑む。
「いっつも心配しすぎなのー!」
少女は起き上がるとベッドから静かに降りた。
「お父様の所に行ってくる。……え?『何するのか』って?」
ふふっと笑った少女は可憐に微笑む。
「転校の手続きしてもらいに行くの。それしかないでしょ?」
少女は一人部屋を出ると扉を静かに閉める。
パタン……
足音は段々と小さくなりやがて聞こえなくなる。
主がいなくなったその部屋に生きているものの気配は無かった。
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朝、クラスメイトが各々自習している中、優羽は一人携帯をガン見していた。
紫音からメールが届かなくなって一週間が過ぎていた。
待てども待てどもメールは着信を知らせてはくれなかった。痺れを切らした優羽は自分からメールを送ってみたのだ。
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話したいことがあるんだけど
会える日ないかな?
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絶対に返信しなければならない状況を作ったのだが、それでも携帯は光らない。