こんな能力(ちから)なんていらなかった



——なんでこうなったんだろ。


 優羽は頬杖ついて窓の外を眺める。
 そこには清々しい空が広がっている。

 今はその清々しさが腹立たしい。



——キーンコーンカーンコーン……



 とうとう始業のベルが鳴る。

 優羽は諦めて、携帯の電源を切ると鞄に閉まった。


 先生がガラッとドアを開けて入ってくる。


 いつものように出欠確認、そして連絡事項を話しながら配布物を配る。

 いつもならこれで朝のショートは終わり。
 先生は出席簿を持って立ち去るはずなのだが。


 今日はいつもと違った。


「今日からこのクラスは一人増えます——入ってください」


 ガラッと音を立ててあく扉。
 優羽はそこから見えた黒髪に嫌な予感がした。

 そしてその予感は外れることがないことも瞬時に悟った。


「白鷹葵と申します。中途半端な時期ですが、これからよろしくお願いしますね?」


 愛らしい微笑みを浮かべる彼女は。


 紫音の隣にいたあの子だった。



 黒髪に反応して心臓が暴れ出す。

 収まれと念じても、それは言うことを聞かずに暴れ続ける。

 多分あと一分も自分の心臓は持たない。
 ならば、することは一つしかない。


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