こんな能力(ちから)なんていらなかった
——そうだ、保健室に行こう。
先生にそのことを伝えようと顔を上げた瞬間、何故かその子と目があった。
元々大きかった瞳が更に大きくなる。
そして満面の笑顔を優羽に向けたのだ。
「優羽!」
クラスメイトの視線が一斉に自分に集まる。
——え、何。
そう思った瞬間、
「ゆう〜〜!!」
あろうことか、その子は優羽に抱き付いたのだった。
「ずっと会いたかったんだからね!」
「……え、と?」
優羽は戸惑いを隠せずにその子を見た。
「知り合いですか?」
先生が困惑した顔を優羽に向ける。
「いや「中学の頃の同級生です!」
被せてきたその子に目を見張る。
「じゃあ、白鷹さんがこの学校に慣れるまで千歳さんが案内してあげてください」
残酷な申し出に優羽が呆然としているうちに、先生はその子の席を指定して教室から出ていってしまった。
「え……ちょっと、」
優羽は先生を追いかけようとその子を押しのけた時、ベルがなる。
一時間目開始の合図がなってしまった今、優羽に逃げ場は残されていなかった。