こんな能力(ちから)なんていらなかった
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「優羽〜」
「どうしたの?葵?」
にっこり微笑む。
けれどその目は実は瞑られていることを目の前の少女は知っているのだろうか。
「今日一緒に帰らない?美味しいケーキ屋さんがあるんだ」
断ろうとした。
が、美味しいケーキへの誘惑に勝てなかった。
「行く!」
「じゃあ早く帰ろう?」
最近はあしらい方(って言うとなんか語弊あるなぁ……)にも慣れてきた。
もう葵が転校してきてから五日が経つから当たり前と言えば当たり前なのだが。
手を引かれやってきた場所はレトロちっくな可愛らしいお店だった。
ケーキもとても可愛い。
注文した後葵がお手洗いに消えたため優羽は携帯を眺めていた。
そこには相も変わらず着信なしの文字。
諦めて鞄にしまった瞬間。
「……優羽?」
どこからか自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。