こんな能力(ちから)なんていらなかった
「あんた本当最低女ね!昔優羽のこといじめて転校させたくせに……まだいじめ足りないの!?」
優羽と葵は突然のことに動けずにいた。
そこに空気を読めずケーキセットを運んでくる店員。
と仁緒はそのティーカップを徐に掴み、
「なっ!?」
「お客様っ!?」
「え……?」
あろうことか葵の顔にブチまけた。
「……あつっ…………」
まだ湯気が立ち昇るそれを。
葵は顔を手で押さえその場にしゃがみ込む。
慌てて手当をしようとした優羽の腕を仁緒は止める。
「いい気味じゃん!こいつのせいで優羽は華桜院にいられなくなったんだよ!?丁度いいじゃん!!」
そしてその場から動けずにいる優羽に更に言い募る。
「罰が当たったんだよ!笑ってやんなよ!因果応報だって!!」
「——……違う」
「何が違うの!散々悪口言って、優羽を不登校にまで追い詰めて……そのせいで優羽自殺しかけたんだよ!?覚えてないの!?」
「違う!!」
優羽の叫び声に店内は静まり返る。
仁緒が怯んだその隙に葵の事を抱き上げる。