こんな能力(ちから)なんていらなかった



「あんた本当最低女ね!昔優羽のこといじめて転校させたくせに……まだいじめ足りないの!?」


 優羽と葵は突然のことに動けずにいた。

 そこに空気を読めずケーキセットを運んでくる店員。

 と仁緒はそのティーカップを徐に掴み、


「なっ!?」

「お客様っ!?」

「え……?」


あろうことか葵の顔にブチまけた。


「……あつっ…………」


 まだ湯気が立ち昇るそれを。


 葵は顔を手で押さえその場にしゃがみ込む。

 慌てて手当をしようとした優羽の腕を仁緒は止める。


「いい気味じゃん!こいつのせいで優羽は華桜院にいられなくなったんだよ!?丁度いいじゃん!!」


 そしてその場から動けずにいる優羽に更に言い募る。


「罰が当たったんだよ!笑ってやんなよ!因果応報だって!!」

「——……違う」

「何が違うの!散々悪口言って、優羽を不登校にまで追い詰めて……そのせいで優羽自殺しかけたんだよ!?覚えてないの!?」

「違う!!」


 優羽の叫び声に店内は静まり返る。


 仁緒が怯んだその隙に葵の事を抱き上げる。


< 109 / 368 >

この作品をシェア

pagetop