こんな能力(ちから)なんていらなかった



「私、別に嫌ってないけど……?」

「……嫌ってる!」

「だから嫌ってないよ」

「嫌ってる!!」

「嫌ってないって!」


 それでもなお嫌いなんだと言い募る葵に優羽は困惑し始める。


「……なんでそう思うの?」


 優羽は葵に率直な問いをぶつける。

 肩を落とす葵は少し経ってから口を開いた。


「…………だって、」


 今までとは全然違う弱々しい声。

 何を言われるかと身構えた優羽。
 だが、それはどうしようもないことだった。


「私の顔、一度も見てくれなかったじゃん……」


 ギクッと身を強張らせる優羽に葵は迫る。


「やっぱり……」

「いやいやいや……!これには深いわけがね!」

「顔見るのに深いも何もないでしょ!?」


 声を荒げたあと葵は一気に大人しくなる。
 そして降りる沈黙。

 その沈黙に耐えきれなくなった優羽は深呼吸をする。



 心臓が落ち着いたのを確認すると覚悟を決めて答えようとした。
 が、葵の目元に光るものにギョッとする。


「なんで、泣いてんの!?」

「…………」


 ポロポロと零れ落ちる雫。


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