こんな能力(ちから)なんていらなかった



「認識甘かったかぁ……」

「なんの認識?」


 葵は髪の毛を触ってから、口を開く。


「優羽の拒否反応」


 目を見開く優羽にもう一度溜息をつく葵。


「……髪の毛切ろうかなぁ」

「なんで!?」

「だって優羽が辛いでしょ?」


 葵の言葉は淡々としていた。




 だけど、その言葉ほど、


愛の篭った言葉を優羽は聞いたことがなかった。




「何で笑ってるの?」

「え、笑ってる?」

「それはもう満面の笑みで」


 葵はふぅーと溜息をつくと徐にポケットから鋏を取り出した。

 慌ててそれを奪い取る。


「何する気!?」

「……髪切ろうと思って」

「ダメ!」


 優羽は思わず叫んでいた。

 叫ばずにはいられなかった。


「なんで、切っちゃうの!?そんな綺麗なのに……」

「今切ろうかなって言ったら優羽喜んだじゃん」

「そういう意味で喜んだんじゃないの!」

「じゃぁ……なんで?」


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