こんな能力(ちから)なんていらなかった



「ついこの前私の顔を見た途端に倒れたくせに?」

「ごめんね?あの時はびっくりしたんだと思う」


 葵は涙目で優羽のことを見上げる。


「もしかしたら私が優羽の夢の中の人間かもしれないんだよ?」


 優羽は真剣な顔になると、葵の体を反転させた。
 それに驚いたらしい葵は固まっていた。


「なんでそれを知ってるの?」

「……なんでだと思う?」

「はぐらかさないで?葵」


 葵とキスが出来そうなほど近付く。

 すると葵は横を向いた。その耳は赤い。


「ねぇ、教えて……?」


 耳元で囁くと葵はポツリと答えた。


「……天使様がついてるから」

「天使様?」

「そう……なぁんでも教えてくれる天使様」

「……見えないよ?」


 葵は指差す。


「ここにいる。優羽にだって見えないよ、姿見せないようにしてるから」


 優羽は指差された空間をジッと見つめるが、何も見えないし波動も感じない。

 数秒の沈黙後、葵はやーい、騙された!と言って手を叩いた。


「優羽ってほんとお人好し」


 数回瞬きをした後優羽は手を伸ばして葵の頬を引っ張った。


「!?」

「嘘つきのほっぺたはよく伸びるなぁー」


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