こんな能力(ちから)なんていらなかった



「いひゃい!」

「当たり前でしょー?」


 葵が涙目になるころ手を離す。


「何するの!?」

「お仕置き」


嘘ついた、ね。


「なにが嘘なの!?」

「冗談って言ったこと」


 葵はピクリと体を止める。


「……なんで天使様がいることの方を信じるの?」

「その目が物語ってるじゃん?」

「…………優羽ってほんとお人好しだよね」


 葵は呆れたような溜息を吐く。


「それに私は見る目あるんだ」

「……そうだったね」


 葵は優羽の胸に頭をすり寄せる。
 その行動が可愛くて、つい頭を撫でる。


「葵の髪ってさらさらで気持ちいいね」

「……知らないよ」


 プイと横を向いた葵の顔は赤くなっていた。


「可愛い」


 葵の真っ赤な頬をぷにと突つく。


「優羽は変わらないね……」

「それ紫音にも言われた」


 紫音の名前を出した瞬間ぶすくれる葵。


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