こんな能力(ちから)なんていらなかった
「ご注文は?」
「エスプレッソ——「えっとおひ」アイスティーのケーキセット。 ケーキはチーズケーキで」
ウェイターは「エスプレッソとアイスティーのケーキセット、チーズケーキですね」と復唱すると一礼して去って行く。
白い足は丁度いい長さのスカートで隠されている。
短いのにどこか上品で——って違う!
「……二杯も飲むの?」
おずおずと尋ねると青年はキョトンとした後プッと吹き出した。
「何でそうなるんだよ」
「えっ……だって」
「紅茶はお前の。 昔から紅茶とチーズケーキしか頼まないだろ?」
その答えにへ?と口が開く。
私の好みまで知ってるの——?
確かに優羽は基本紅茶しか飲まない。そのことを知ってるのはかなり親しい奈々ぐらいだ。
なのに初対面の男が知っている。
ということは、やっぱり……——
「貴方は私を知ってるの?」
青年は綺麗な眉を顰めると「さっきも思ったけど」と呟く。
「それ、新手のギャグ?」
「違うってば!」
思わずテンションが上がりかけた自分を自分自身で落ちつかせる。